何でもない日を君と



 地上から地下二階までを一通り見て回り、ステージ確認という名の散策も終了かと思われた。も「楽しかったですね」と満面の笑みでルキノを見上げている。
 しかし、ルキノにはもう一つ、彼女に見せたいものが残っていた。
「……実は、キミが喜びそうなものがあと一つあるんだが……どうしますか?」
「えっ!? 結構くまなく見たと思ってたんですけど、まだ何かあるんですか……!? 見たい! 見たいです!」
 ルキノがそう言うならば確実に自分が喜ぶものなのだろうと確信した様子でが顔を輝かせる。飛び跳ねんばかりの勢いで食い付いた彼女に押し殺したような笑い声をこぼしながら、ルキノは「わかりました」と頷いた。
「我々がこの階層に来る際はリフトを使用しましたが、その先の坑道からでもここに来ることができましてね」
「坑道……そういえば、レールがずっと続いてましたもんね」
「その道の途中に大変興味深いものがあるんですよ」
 言葉を交わしながら足を進め、目的の場所へと向かう。
 上の階層へと続く坑道は普通にゲームをするだけならば通ることはまずない。ルキノがそれを発見したのも、新しく追加されたこのステージを一人で見て回っている時のことだった。
 坑道に入り、少し歩いたところにそれはある。薄暗い道の先にぼんやりと光る何かがあることに気が付いたが期待に満ちた瞳でルキノを見上げる。彼はあえて何も口にすることはなく、ただゆっくりと『それ』に向かって足を進めるだけだ。
 最下層にあった石塊とは違い、柔らかい光を放っているそれが見えてきた辺りで、は困惑したような声をこぼして足を止めた。かと思えば早足でそれに近寄り、興奮を隠しきれない様子で壁に触れる。
「教授……! これって……!?」
「私もまだ詳しいことは分かっていないからなんとも言えないのだが……実に興味深いでしょう?」
 二人の前にあるのは、巨大な瞳だった。時折辺りを見回すように動いては目蓋を開閉するそれは限りなく爬虫類のものに近い。初めてこれを発見したルキノも壁に張り付く程の勢いで観察をしたものだ。
 ルキノの言葉に頷くは軽く壁を叩いてみたり手を振ったりして瞳の動向を観察している。
「一応こちらを認識してはいる……ような気はしますね……でもこれ、もし生きているとして、どういう生き物なんでしょうか……夜行性のトカゲかなとも思ったんですけど、それにしてはまばたきの仕方に疑問を覚えるというか……」
「そう、私もそれが気になっていましてね。瞼の動きが我々の知るものとは違う。瞬膜でないことは明らかだが、それではこの瞼の動きはどういうことなのか、という話になってくる。もしや爬虫類ではなく猫か何かなのでは、と考えもしたがもしそうならばこのような暗所において瞳孔はもっと丸くなるはず。それに、眼球周辺の皮膚を見ると明らかに鱗を有している。つまり哺乳類だとは考えにくい」
「うーん……個人的には爬虫類説を推したいんですが……ちょっと瞼の動き方が違うだけでそうじゃないと決めつけるのも早計ですよね? 現時点で確認されていないだけで上下の瞼が同じくらい動く種がいる可能性だってありますし」
「ウム。それは勿論そうだろう。そもそも眼球だけでこれほど大きな生物、それも爬虫類となると私も聞いたことがない。新種と考えるのが妥当――いや、待てよ。少し前に興味深い文献を目にした記憶がある。クンは聞いたことがないかね? 現在は絶滅したとされる、太古の存在……巨大な爬虫類の存在を」
「……! もしかして……!」
 目の前の存在について各々の意見を述べていた二人だったが、ルキノの言葉でが弾かれたように顔を上げる。『恐竜』という声が重なると、ルキノもも隠し切れない昂りをその表情に浮かべた。
「なんということだ……! 何故私は今までその可能性に気が付かなかったんだ!? あァ、クン、これは大変なことだぞ! まさかこんなことがあろうとは……実に素晴らしい……!」
「ゆ、夢みたい……! いつか実際に化石を見たいとは思ってましたけど、こんな形で限りなく本物に近いものを見られるだなんて……!」
 狭い坑道にルキノたちの声が響き渡る。実際にそうだという確信は無かったが、その可能性があるというだけで彼らを熱狂させるには充分だった。
 ルキノとて、確実にその生き物がここに居るのだと信じているとは言い難い。このような地下深くに、動き出せばすぐにこの空間が崩壊してもおかしくないほどの巨大な存在が埋まっているなどと誰が信じられようか。こんな場所にいては食事もできないだろうし、おそらくはこれも、このステージの『雰囲気』を出す為の演出の一つなのであろう。
 しかし、だ。月の河公園に存在するライオンはおそらく餌を与えられていないが、ずっとあそこに存在している。つまり、あれは生きているようで生きていないのだ。本物と見紛うほど精巧に造られた機械人形か何かではないかとルキノは推測しているが実際のところどうなのかは分かっていない。問題はそこではなく、そのようなものが存在しているという事実である。
 実際にこの壁の向こう側に恐竜が居るとは限らないが、あのライオンと同じように驚く程精巧なそれが埋められているという可能性は否定できない。元々絶滅したとされている生物なのだ。本物が見られるのならばそれに越したことはないが、が口にした通り『限りなく実物に近い何か』だとしても自分たちの好奇心を満たしてくれることだろう。
「これ、壁壊せたりしないんですかね。壊したらここ崩れ落ちそうですけど……」
「残念ながら、壁や障害物の類は基本的に壊せないらしい。例外的に赤の教会の一部の壁は壊すことができるが、そのくらいですね」
「ですよねぇ……」
 こつこつと指先で壁を叩いてはどうにか他の部分が見えないかと奮闘するの後ろに立ち、同じように透き通ったそこに指の関節を軽く打ち付ける。それほど分厚いようにも見えないそれは見た目以上の強度を持ち、ハンターの攻撃でも傷一つ付けることはかなわない。壁に限らず、ステージに配置された様々な障害物においてもそうだ。破壊はおろか傷を付けることも難しいし、軽そうに見えても動かすことができないというものも多い。簡単に破壊や物の移動ができてしまうと原状回復が大変だったりするのだろうか。そんなことを考えながらを見下ろせば、彼女は諦めきれないといった様子で壁面――その奥にある瞳かもしれないが――を見つめていた。
 彼女の気持ちはルキノも痛い程理解している。何とかしてこの壁の向こう側にいるものをステージ内に移動させることはできないのかと、彼は初めてこれを見た時からずっと考えているのだ。
「悩ましいな……」
「えっと、ナイチンゲールさん……でしたっけ。あの人に頼んでみるのはどうでしょうか……?」
「ンン……簡単に聞き入れられるとは思えんが……しかし、試してみる価値は――」
『いや、貴方たち一体何なんです?』
「!? えっ、この声って……!」
「……また面倒な……」
 突然通信機を介して二人の耳に届いた声には目を見開いて辺りを見回し、ルキノは顔に浮かべた苦々しさを隠さず深く息を吐いた。
 聞こえてきた声は間違いなくジャックのものである。カスタム戦はゲームに参加している者以外でも観戦をすることができるとは聞いていたが、途中から観戦できるということも参加者の通信に介入できるということもルキノは知らなかった。
 あからさまに表情を曇らせた彼らを歯牙にもかけずジャックは言葉を重ねる。
『朝からずっとカスタム戦にこもっているというからこれはもう絶対そういうことだろうと胸を高鳴らせながら様子を見に来たというのに、蓋を開けてみれば壁に向かって意味の分からない話に花を咲かせているだけとは……私の期待を返してくださいよまったく。どうしてくれるんですかこのやり場のない気持ち』
「知らん。帰れ」
「そういうこと……?」
「やめなさいクン。あの男の言うことなど深く考えるだけ無駄だ」
 彼の台詞に首を傾げるをルキノが軽く窘め、これだからこの男には今日のことを言わずにいたのだと眉根を寄せる。今はそれなりに遅い時間のはずだし、おそらく一日中姿を見ていないだの何だのという話をした中で、事情を知る者が自分たちのことをジャックに教えたのだろう。特に言い回っていたわけではないが用事や協力狩りの誘いを断る際に理由を話した覚えがある。ジャックには言うなと口止めでもしておけば良かったかと後悔するも今更どうしようもない。
『でもステージ散策というのもたまにはいいかもしれませんね。私も混ぜてくださいよ。ハンター二人サバイバー一人の協力狩りで』
「何が起こるか容易に想像がつく提案をありがとうございます。却下だ」
 誰がそんな提案を受け入れるかとルキノは考える素振りも見せずに一蹴した。これが他のハンターであれば彼も二つ返事で申し出を受け入れた可能性が高い。しかし相手はジャックである。この男が大人しくステージを散策するだけで終わるとはルキノには到底思えなかった。何もしないなどと口にしているが本当に何もする気がないのならそんな発言が出てくるはずがないのだ。
 ジャックの話に付き合っていると気骨が折れる、と、ぺらぺらと一人で喋る男の声を聞き流しながら首の後ろを摩る。そこであることに気が付いたルキノはに目を向けた。
「そうだクン。どうせ我々は使う必要もないのだし通信機の電源を――クン?」
 この喧しい声を届ける通信機は彼女と集合するのに使っていただけで、何もずっと電源を入れている必要は無かったのだ。近くにいるにも関わらず二重に音が聞こえるなどということがなかったためまるで気にしていなかった。無駄に高性能なのも困りものである。
 そのことをに伝えようとしたはいいが何やら彼女の様子がおかしい。赤く染まった頬に手を当て、困ったようにルキノの顔色を窺っている。一体突然どうしたのだと首をひねったルキノは、先程のジャックの発言を思い出して合点がいったと額に手をやった。ルキノとしては意味を理解することができないのならそのままで構わない――むしろ理解してほしくないとすら思っていたのだが、さすがにそれはかなわなかったようだ。
「す、すみません教授、私の浅はかな考えで教授が不名誉な誤解を……」
「いや、提案したのは私だ。謝る必要などありませんよ。……しかし、私は誰にどう思われようと構わないが……キミが根も葉もない噂話の対象となる方が問題だな。どこにでも品性の欠落した人間はいるものだと理解はしていたのだがね。私が軽率だった」
『もしかして今私さりげなく罵倒されました?』
 渋い表情のまま自省するようにルキノがゆるく頭を振る。彼らにとって、二人で野外を散策することなど特に珍しいことではなかった。だからこそルキノは軽い気持ちでこの話を持ち掛けたし、もただ純粋にその厚意を有難く思い、受け入れたのだ。
 確かに、昔も低俗な発言をしてくる者はいた。だがそういったことを口にする者は大抵ルキノが軽く睨みを利かせれば揃って黙り込むためそれが彼女の耳に入ることはなかった。
 彼女が変な噂話に気を悪くすることがないよう密やかにその手の輩を黙らせてきたというのに、まさかこんなところに伏兵が潜んでいるなどとは思いもしていなかった。
 ――ジャックの性格を考えれば面白くなりそうだと思ったら事実であろうとなかろうと声高に揶揄してくるであろうことは予想できたし、それをルキノが咎めたところで口を噤むことはないと頭では理解していたのだが。
 しかし、この男がやって来たのが今でよかったとルキノは内心で胸を撫で下ろした。赤の教会でのやり取りを見られていたらこれどころの騒ぎではなかっただろう。さすがのルキノもあの行為に他意が無いということを証明するのは困難を極める。ジャックのような相手に弁明をしようとするのなら尚更だ。
「……通信機を外したところで、煩く騒ぎ立てる外野がいると思うと落ち着いて散策もできませんし、今日のところはこれでお開きにするとしましょうか。時間も丁度良い頃合いでしょうしね」
「はい……」
 様々な感情を綯い交ぜにしたような顔で頷くにルキノは眉尻を下げる。
クンが気に病むことはない。むしろ私のような者との仲を言い囃されるなど、キミの気分が良くないでしょう」
「そんな……私は、全然……! 教授が私なんかを相手にすると思われる方が問題です……!」
『貴方たち、それどういう感情で言ってるんですか……?』
 若干引き攣ったような声が耳に届き、まだいたのかとルキノは鬱陶しげに目を細めた。思っていたのと違うだの何だのと言うのならさっさと自室にでも戻ればいいものを。自分たちに構っているよりも有益な時間の使い方などごまんとあるだろうに、この男の行動は本当に理解ができない。
「どうもこうも私は彼女の身を案じているだけだが? アナタのような品性も倫理観も欠如した輩の言うことを彼女の耳に入れたくないものでね」
『ルキノさん、前にも増して私への当たりが強くなってませんかね。そこまでばっさり言うことは今まで――まあまあありましたけど、そんなに敵意を剥き出しにしなくても。私はルキノさんともさんとも親睦を深めたいだけだというのに……実に悲しいですねぇ。涙で溺れてしまいそうです』
 わざとらしく泣き真似をするジャックの声は酷く耳障りだ。怒りも呆れも通り越してただひたすらに面倒臭い。眉間を揉み、付き合っていられないと通信機のスイッチを切る。未だに落ち込んだような顔をしているが着けているそれも取り除き、その頭に手を乗せた。
 ルキノを見上げる彼女に小さく笑いかけてやれば、その表情は僅かに柔らかさを取り戻した。やはり彼女には暗い表情よりもこういった表情の方が似合うなと内心で思いながら髪に手を滑らせる。
 しかし、と、ルキノは思案顔でその手の動きを止める。
「……まだ全て見ることはできていないが、こうしてステージを散策するのは控えた方が良いかもしれませんね」
「えっ!」
 彼の呟きに顔を上げたは「そう、ですよね……」と再びその表情を曇らせて俯いてしまった。ルキノも彼女とのこうした時間は自身にとって有意義なものだと感じているし、彼女の為にも続けてやりたいとは思っている。だが、ああいった手合いがジャックだけとは限らない。特にサバイバーは人数も多く、こうした噂話を好む者もいるだろう。彼自身は何を言われようとどうということはないがそれにが絡んでくるとなると話は別である。
 どうしたものかと悩むも打開策は浮かんでこない。自分はこうも頭の回転が遅かっただろうかとルキノは眉間に皺を寄せた。
「……私、は……」
 小さく服を引かれて下を向くと、苦しげに表情を歪めたがルキノを見つめていた。
「私は、もし誰かに変なことを言われても平気です。良くしてくれている方も多いので、面と向かって言われることはそんなにないと思いますし……でも、教授は、その、ハンターだから……好感情を持っている方ばかりじゃないかもしれなくて……そういう方たちに教授が私のせいで嫌なことを言われるのは、嫌で……でも、私は……――ごめんなさい、もう自分でも何を言ってるか……何が言いたいのか、まとまらない、です……」
 再び下を向いてしまった彼女の言葉にルキノは目を瞬かせた。どうやら、彼女と自分は全く同じことを考えていたらしい。
 それならば、とルキノの頭に浮かんだ考えは至って単純なものだった。根本的な解決にはなっていないそれは、普段の彼であれば提案されたとて『そんな考え方をして何になる』と棄却していてもおかしくない策である。
クン。私は自分が周囲にどう思われようと痛くも痒くもないが、キミが心無い言葉に傷付くのを見たくはない。対して、キミが今言ったのはその真逆――という認識で合っているだろうか」
「……? ……はい。そうです、けど……」
「つまり、だ。私は何を言われても気にしない。キミも同様に、何を言われたところで気にしない。相手が自分の所為で好奇や敵意に満ちた目を向けられることを危惧しているが、互いにそれらをものともしない……ということになる」
「……あの、教授……?」
「周囲からの悪意による精神的ダメージは互いにゼロということになるから、あとは『自分の所為で』という罪悪感を消してやればいい。そこで私はこう考える。好奇の目はキミだけの所為でも、私だけの所為でもない。こうして過ごす事を決めた『二人の』所為であると。そうすれば罪悪感を自分だけで背負う必要もないだろう」
 が『何を言っているんだ』というような顔でルキノを見つめている。ルキノ自身、自分は一体何を言っているのかと思わないわけではない。彼の言っていることは、言い換えればつまりは『気の持ちよう』である。精神論で物事をどうにかしようとするなど愚かでしかない。彼は常々そう考えているが、しかし、現在のこの状況をどうにかするにはこう考えるほかないというのも彼にとっての事実であった。
 ぽかんとしていた彼女が、突然ふっと息を吐き出す。口元に手を当てた彼女はおかしくてたまらないといった様子で破顔した。
「っ、ふふ……教授、それ……すごい暴論……!」
「……やはりキミもそう思うかね」
「まさか教授がそんなこと言うなんて……ふふ、もう、教授ってば、」
 くすくすと笑みをこぼすは彼の発言が相当意外だったようで、その笑い声はルキノが「そこまで笑わずともいいだろう」と複雑な表情を浮かべても収まることはなかった。
「ふふ……でも、私、嬉しいです。どうにかして抜け道を、って考えてくださったんですよね? 教授、そういう考え方は嫌いなはずなのに」
「……キミと過ごす時間は私にとって有益なものですからね」
 折角こうして再会できたというのに、赤の他人にそれを奪われたくはない。そう伝えれば彼女は気恥ずかしさを滲ませつつも嬉しそうに表情をゆるめた。
「……私がそれに同意したら、教授はもし私が誰かに何かを言われたとしても気に病まないでいてくれますか?」
「ええ、私への悪評をクンが気にしないと言ってくれるのならば私もそうするよう努めますよ」
 ――気に病まないよう努める、というだけで、彼女を貶めるような発言をした者を黙って放置しておくつもりは毛頭ないが。
 そんな言葉は飲み下し、自分を見上げる彼女と目を合わせる。ルキノが頷いたのを確認したは窺うように口を開いた。
「それじゃあ、またこうして一緒にステージを見て回ったりもしてくれますか……?」
 その問いに勿論だと返してやれば、はこぼれるような笑みを浮かべた。ルキノも口端を持ち上げながら『仮にもハンターとサバイバーなのだが』と何度目になるか分からないことを考えるも、お互い様だなと息を吐き出した。
 そもそもこのステージ散策も提案したのはルキノである。話をすることで彼女の能力について知ることはできたが、それ以外に『ハンター』である彼が得るものは何一つ無い。それでもこうして時間を取ったのは、ハンターとしてではない『ルキノ・ディルシ』個人が彼女の手助けをしてやりたかったからだ。本来ハンターがサバイバーに対して抱くべき感情ではないとルキノ自身も理解しているし、だからこそ彼は困ったように笑いながらの頭を撫でることしかできなかった。
「では、今日のところは戻るとしましょうか。今日見ていないステージは広い場所ばかりですから、次もお互いゲームが無い日の方がいいでしょう」
「わかりました。戻ったら予定確認しておきますね! そうだ教授、雪が降ってるステージもあるって聞いたんですけど、そのステージでも教授は普段と変わりなく行動できるんですか?」
「フム……それについては私も気になって何度か――」
 そろそろ戻ろうと言った矢先、彼女からの質問を受けたルキノが過去に行った実験やその結果を踏まえた仮説を次々と述べていく。もまた真剣な顔でそれに聞き入り、興味深そうに相槌を打っている。
二人が荘園に戻るには、まだ時間がかかりそうだった。





afterwards...



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