オシリスメンバーで仲良く飲み会に行くの巻(飲み会パートまで辿り着けていない)。
男女の体格差ってのはあるけど胸囲90とか言われるとびびりませんか。
男女の体格差ってのはあるけど胸囲90とか言われるとびびりませんか。
「じゃーん! どうよこれ!」 いつ鼻歌を歌い出してもおかしくない様子のレイが目の前に差し出した一枚の紙を受け取ったは感心の声をあげた。 「わ、かっこいい! 次のライブのフライヤー?」 「あったりー! なかなかいい感じに出来てるだろ?」 「うん! 今回のはビシッとして『ザ・オシリス!』って感じだね!」 だろだろー、とレイが得意げに胸を張る。嬉しそうな彼にもにこにこ笑いながらフライヤーに目を通していく。裏にも印刷がしてあることに気が付きそちらも読むために裏返すと、レイが「あっ、そーだそーだ!」と言葉を発した。 「今回はメンバーのプロフィールも入れてみたんだぜ! こりゃ街で女の子に『映画観に行きませんか』とか『カクテル作ってください』とかって誘われちまうかもしれないからイメトレしとかなきゃなー」 真琴がこの場にいたら「何バカなこと言ってるんですか」と一蹴されそうなことを語るレイであったが、からの反応が全くないことに気が付き不思議そうな顔で彼女を見る。彼女はというと、先程までの笑顔はどこへやら、フライヤーが破れてしまうのではないかというほど強く握りしめ、手を震わせ、一点を凝視していた。 レイはそんな彼女の様子にぎょっとして、おそるおそる声をかける。 「お、おい……どうしたんだよ……?」 「………レイくん………」 彼の声に顔を上げた彼女はがたりと突然立ち上がり、その音にレイが肩を揺らす。絶望と表現しても過言ではない表情をしたが徐にレイの方へ手を伸ばし、彼は困惑しつつその手を取ろうとした。 「なあマジでどうし――」 レイが持ち上げた腕をすり抜け、の手はぺたりと彼の胸に触れた。 「……ん?」 目を丸くしそのまま目線を自分の胸まで下げた彼に構わず、ぺたぺたとその胸板をまさぐる。数秒経ってようやく状況を飲み込み始めたレイが疑問符を飛ばしつつもに問いかける。 「あ、あのー……ちゃん? 何? なんでオレ唐突にセクハラされてんの?」 「…………プロフィールの……」 そこでようやくが声を発したかと思うと、がばりと勢いよく顔が上がり、またもレイの心臓は飛び上がりかける。下手をすると泣いてしまうのではないかというような表情に、レイは内心オレ何かしたっけとひやひやしていた。 「バスト90って本当!!?」 「………………は?」 その口から飛び出した言葉を咄嗟に理解出来ず、間の抜けた声がレイの口から漏れる。一体何の話をしているんだと目を瞬かせる彼に半ば叫ぶように彼女が詰め寄る。 「だから! このプロフィールの! スリーサイズ! 本当なのっ!?」 「待て待て待て落ち着けこら揉むな! これ書く時に測ったから多分合っていや分かったから揉むなって!」 暴走する彼女の手を押さえつけ、一息つく。手は止まったものの未だ恨めしげな目を自分の胸に向けるにレイは何かを察したような顔になった。 「あー、なんだ……はまあ、特別でかくもねーけど多分普通よりはいってえ!」 「さいってー!! セクハラ!!」 「いやそれお前が言っちゃう!?」 悲痛な面持ちで口を開いたレイの足を思いっきり踏みつけ、はぎりりと彼を睨む。うるさいはなして、とりあえず落ち着け、と二人がぎゃあぎゃあ騒いでいると、部屋のドアが突然開いた。 「お疲れ様で……何ですかこの状況は」 「うわーん真琴さん!!!」 真琴の登場で緩んだレイの拘束から抜け出したが真琴に駆け寄る。 「あっ、こら!」 「……レイさん……いつかやるかもしれないとは危惧していましたがまさか……」 「いやいやちげーから! ってかいつかやると思ってたのかよ!?」 「いえ、正直そんな度胸はないと思っていました」 「それはそれで複雑だよ!!」 側に来たをレイから隠すようにする真琴にレイが声を荒げる。言い合う二人を横目に、は目の前にある真琴の胸板を見ながら先ほどのプロフィールを思い出していた。 そして彼女の記憶がその情報を探り当てた瞬間、弾かれたように顔を上げる。 その勢いの良さに驚いた真琴が彼女を見下ろすと、彼女は「裏切られた」というような顔で彼を見つめており、彼は狼狽える。 「な、何ですかその表情は…………ああ、そうですね……こういった場合に異性が体に触れるのは軽率でした。すみません」 「おいこらさっきから失礼だぞ!? だからちげーんだって! っつかどっちかっつーと被害者オレだから!」 真琴の言葉に反応したレイが反論し、そんな彼に向き直りながら真琴は深く溜息を吐いた。 「……いいですかレイさん。往々にして加害者は――」 「だーーーー!! 話が通じねーーーー!!!」 「……ま、真琴さん……」 レイが地団駄を踏んでいるのを半分呆れながら見つめる真琴の服の裾をが引く。それに気が付いた真琴は「何ですか」と彼女の方に視線をやった。 「あの……真琴さんのこのプロフィール……本当なんですか……」 「?」 唐突に突き出された見覚えのあるフライヤーを眺め、真琴は訝しげな表情を浮かべる。 「どういう事ですか?」 「えっと、その……スリーサイズ……とか……」 ごにょごにょと告げるに、表情を崩さぬまま「はあ、まあ一応は」と告げる。途端、深い深い息を吐き出しふらふらと部屋の隅に歩いていく彼女を見て、真琴は首を傾げた。 「…………彼女、どうしたんです?」 「あー、まあ、なんつーか……聞いてやるな……」 「はあ……」 蹲り「進くんはまだ分かるけどまさか」などとぶつぶつ呟いているに一体何だったんだと言いたげな視線を送り、真琴は軽く息を吐いた。 「まあ何もないならばそれでいいんですが」 「それにしてもさっきの濡れ衣は酷いんじゃねーの?」 「京さんと進さん遅いですね」 「無視かよ!」 「……すまない。遅くなった」 丁度二人の会話に名前が出た京が、小さな声と共に開かれたドアから現れる。気が付いたレイと真琴が声をかけようとしたが、それより早くが体当たりでもするかの如く京に抱きついた。 「!? ……!?」 突然のことに全く状況が把握できず、京は目を白黒させる。「京くん……京くんは私を裏切らない……最後の良心……」と自分の胸に顔を埋めて呟いているをどうすればいいのか分からずにレイと真琴に助けを求めるように視線を投げかける。しかし京の期待とは裏腹に二人はなんとも言えない表情でゆるく首を振ったため、京は硬直したままどうしたものかと脳内会議を開くことしか出来ず、結局進がやってくるまでそのままの状態であることを強いられたのであった。
2017.10.25
サイト掲載 2017.10.31